切なさの図

  • 日本中 あまねく沸き立ち 身も溶け不快 ひえ~止めてムリ 晴れるお空を 喜べぬ 切なさの図
  • にほんじゅう あまねくわきたち みもとけふかい ひえ~やめてむり はれるおそらを よろこべぬ せつなさのず
  • 日本中あまねく沸き立ち、身も溶けるほどで不快だ。ひえ~もう止めて、我慢できないムリ。晴れたお空を喜べない。―― 切なさの図。

猛暑です。

全国各地で高気温に見舞われています。
6~8月の平均気温が3年連続、しかも異常なペースで上昇しているとのこと。
身に沁みてそれを実感するにつけ、急遽作成を思い立ちました。

語法と内容について。
「あまねく沸き立ち」に関して。
ともすれば助詞として使いがちな「ね」を含む「あまねく」は、待望の初登場(?)です。今までに何度かチャンスがあったものの、組み合わせの都合で断念していました。それにしても、”北は北海道から…” のフレーズが猛暑にまで及ぶようになるとは。
「沸き立つ」は、この暑さを表すうえで真っ先に浮かんだことばです。

「身も溶け不快」に関して。
“身体が溶けるぐらい暑い” と、ニュースの街頭インタビューでときどき耳にします。
カラッとしていればまだしも、日本は湿度のせいで「不快」指数が高い。

「ひえ~止めてムリ」に関して。
急造したせいか、前回の『生ビール』にある「止められぬムリ」とやや似通った文句になりました(「身」も重複)。
かなパズルを作るさい、一度使用したことばをほかの作品ではできるだけ使わないように、とはつねづね心がけていることです。
もちろん現実的なことではありません。これまで複数回用いた語句もたくさんあります。
ただ、日本語はパングラムで使用できる語彙が豊富にあり、せっかくならいろんなことばを使って表現したい。
不思議なことに、以前の作品とことばが重ならないよう意識することで、そのぶん苦労はするものの作品の質が高まる気がします。マンネリ化を避ける点でも有効でしょう。
ちなみに、感動詞の「ひえ~」は、皮肉のように「冷え」と掛けています。

「切なさの図」に関して。
「~の図」という言い回しを、いつか採り入れたいと考えていました。ある状況を示した写真や絵に対して、「ケーキを食べ損ねて悲しいの図」や「友達と買い物へ行くの図」、「慣れない仕事に必死の図」などとキャプションで付けられます。直前に来るのは形容詞でも動詞でも名詞でもかまいません。
本作では初句~6句まで、とりわけ「晴れるお空を 喜べぬ」を受けて、そんな気候環境に至った現状を「切なさの図」というわけです。
けっこう古くからある表現だと思うのですが、手持ちの日本語関連本にもネットにも「〜の図」を語法としてとり上げ説明しているものが見つかりません。
たほう、たとえばX(旧ツイッター)で「の図」と検索すればすぐにいくつか出てきます。
俗っぽいことばづかいなのかもしれませんね。

私が学生のころ――20数年前――、真夏に照りつける日射しはきつくても、まだ心地よさを感じられるものでした。
しかし、現在は直射日光を浴びると肌が痛く、文字通り「日が射してくる」感じです。もともと肌の弱い私は、外出時に半袖ではいられなくなりました。小学生や男性が日傘を差している光景も珍しくありません。
お天気を素直に喜べないなんて、ほんとうに切ないこと。
夏の「日光浴」は死語になりつつあるでしょうか。

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