女男織りなす絵巻物

  • 光源氏や 藤壺ら 女男織りなす 絵巻物 歌詠み率寝て 行方得ぬ色わざ あはれにぞせむ
  • ひかるげんじや ふぢつぼら めをとこおりなす ゑまきもの うたよみゐねて ゆくへえぬいろわざ あはれにぞせむ
  • 光源氏や藤壺たち、男女が織りなす一大絵巻物語。歌を詠んだり共寝したり、行方の知れない恋愛模様をもののあわれと繰り広げることだろう。

日本が世界に誇る長編小説『源氏物語』のあらましを詠みました。

当初入れようと思っていたキーワードは「光源氏」「紫の上」「女男」「絵巻物」「あはれ」。でも「紫の上」と「絵巻物」は「き」がかぶっている。内容から「絵巻物」のほうが大切だと判断し、「紫の上」を断念。人物は源氏だけにするしかないと思っていたら、余った文字で「ふぢつぼ」が。藤壺も紫の上と並ぶ重要人物なので、これ幸いと採り入れました。
所要時間は3時間ほど。

内容について少しご説明すると、「歌詠み率寝て」は恋愛の具体的な様子を表現しています。かつて、貴族たちの恋愛で歌のやりとりは必須でした。『源氏物語』でもたくさん詠み交わされており、「歌詠み」はそのままそのことです。「率寝」はナ行下一段動詞「率寝る」の連用形で、「共寝する」の意。仲良く隣り合って寝る、のでないことはみなさんお分かりですよね。
「行方得ぬ色わざ」の「行方得ぬ」は、ほぼそのまま口語で通じるはずです。「行方を得ない、どうなるか分からない」ということ。「色わざ」は「色」と「わざ」を並べたもので、「色」は「恋愛」、「わざ」は「行ない、行為」。「恋愛行為」はやや不自然なので、訳では「恋愛模様」としました。

文語のかなパズルはいくつか作っていますが、この「女男織りなす絵巻物」はベストの1つであると認識しています。文法的にも語法的にもまったくといっていいほど無理がありません。文の組み立ても語彙もシンプルで、「率寝て」以外は現代語の感覚でほぼご理解いただけるのではないでしょうか。
内容にかんしても、私の好きな本居宣長が『源氏物語』に底流していると説いた「もののあはれ」が表現できているし、物語の全体像が簡潔に示されている。こんなふうに書くと自画自賛と思われるかもしれません。でもかなパズルというのは、その性質から自力だけで叶うものではない。かならず「運」の要素が入ってくる。この歌を作ったのはたしかに自分だけれど、他力が介在している感覚が伴っている。だから、自作を評価するときも他人の作品に対しているような気がするのです。そこがまたかなパズルのおもしろいところではないでしょうか。
ついでながら、「あはれ」と「せ、そ、に、む」が余った状態で「あはれにぞせむ」が見えたときには、予定調和ででもあったかのようなかなパズルの不可思議さに感じ入りました。

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