花火夜空を赤く彩る

  • 花火夜空を 赤く彩る 「玉屋」の声満ち 星も揺れ 煙におう 全部すべて 熱気冷めぬわ
  • はなびよぞらを あかくいろどる たまやのこえみち ほしもゆれ けむりにおう ぜんぶすべて ねっきさめぬわ
  • 花火が夜空を赤く彩る。「玉屋~」の掛け声があちこちから聞こえて満ち、花火のきに星も揺れ、辺りは煙のにおいがたちこめる。これらの情景全部、すべての熱気が冷めないことだよ。

打ち上げ花火です。

花火といえば夏の風物詩ですが、この作品が生まれたのは季節違いのある春の日。ふと「花火夜空を 赤く彩る」のフレーズが浮かび、ひと文字もかぶっていなかったので作ろうと思い立ちました。

語法について。
「『玉屋』の声満ち」に関して、現代人が打ち上げ花火を見ながら「玉屋~」と声を上げることはほとんどないでしょう。シチュエーションに合わせたフィクショナルな表現です。あるいは、時代設定をもう少し昔にしてもいいのかもしれません。
「星も揺れ」は、花火がドーンと轟いたときの大気や身体が震動する感じを星に仮託して比喩的に表したものです。小学生のころにほぼ直下で見たことがありますが、炸裂するたびに心臓を中心として全身が揺さぶられた感じはいまもよく憶えています。
「全部すべて」に関して、終盤になって余ったのが「す、せ、て、ふ、へ、わ、ん」でした。このなかで文脈に適合する組み合わせは、思いつくかぎりでは「ぜんぶ」と「すべて」。同じ意味のことばを連ねるのはどうかと最初は感じたけれど、1~5句までの興奮冷めやらぬ状況を強調するなら不自然でないと考え、そのままくっつけました。たとえばコース料理を堪能して「もう全部すべてとってもおいしかった!」と感想を述べたり、大好きなアーティストのコンサートへ行ったあとに思わず「全部が全部、すべて最高だった!」とSNSに書き込んだりするのはおかしくないでしょう。また、「マジでホントに凄いんだって」とか「決して、絶対に許さない」といった言い回しに違和感を覚えることもないはずです。硬質な論説でこうした表現はあまり用いるべきでないかもしれませんが、日常的なことばづかいとしては無難だと思います。

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