ナポレオン

  • ナポレオン エネミー退け 皇帝へ ヨーロッパ踏む あまた騒がせ 綺羅を譲るも 呑めぬと百日
  • なぽれおん えねみーしりぞけ こうていへ よーろっぱふむ あまたさわがせ きらをゆずるも のめぬとひゃくにち
  • ナポレオンは内外の敵を退け、皇帝の地位へ。ヨーロッパの地を蹂躙する。各地をおおいに騒がせたのち、栄華を極めた時代は明け渡したけれど、まだ諦めきれないと、ふたたび百日だけ天下を獲った。

フランスの英雄、ナポレオン=ボナパルトの生涯を描きました。

世界史における第一級の偉人であり、評価は毀誉褒貶相半ばするけれど知名度は群を抜いています。
高校の世界史に毛が生えた程度の知識しかありませんが、作品に即して簡単に足跡を。出自は大したことがなかったものの、戦争で活躍し名声を得ながら国内の政争も勝ち抜けることで(エネミー退け)トップに登りつめて皇帝の位に就き(皇帝へ)、そののちヨーロッパをほぼ手中にします(ヨーロッパ踏む)。各地でさまざま暴れながら(あまた騒がせ)も勢いはしだいに弱まり、ロシア遠征で大失敗したことから暗雲が垂れ込め、ついには皇帝の地位を失い(綺羅を譲る)島流しに。でもまだ野心衰えず(呑めぬと)、エルバ島を脱出してふたたび皇帝に返り咲くも3カ月ほど(百日)で敗れ、彼の時代は終焉しました。いわゆる「百日天下」です。

「ナポレオン」と「皇帝」、そして「百日」をキーワードにスタートし、「ヨーロッパ踏む」辺りまでおおよそできたところから、大いに苦戦しました。「綺羅」を思いついたことが完成へのきっかけになったと思います。当初はもう少し違う内容で完成したものの、いくつか気に入らない点があったので日を改めて検討。その結果、ほぼ過不足なく収まってはるかによくなりました。
ナポレオンの生涯をかな46文字でまとめることなどそもそもできるはずがなく、いかに要所を外さず表現するかがさらに難しい。しかも、ただでさえ内容のコントロールが困難なかなパズルという条件下で。そのわりには、無理のない流れでまとまったのではないかと思います。1つの節目となる作品であったこともあり、2日がかりの甲斐がありました。自分のなかでは大切な一作になりそうです。

語法について。
「エネミー」は「enemy」で、「『敵』にしても『相手』にしても『皇帝』と文字がかぶるなぁ」と困っていたら見つかりました。『エネミー・オブ・アメリカ』や『エネミー・ライン』のように洋画の邦題にも用いられています。口語作品はカタカナ語も利用できるのがありがたい。
「皇帝へ」の「皇帝」は初め「エンペラー」と迷い、後者が「ナポレオン」と「ん」でかぶるので前者に。
「踏む」は「踏みつける」という意味合いで、訳では「蹂躙する」と強い表現を用いました。
「あまた騒がせ」はヨーロッパ各地で戦争を繰り広げたことを表しています。地理的に遠く隔たり利害関係もないわれわれ日本人にとっては、華やかなイメージを伴う英雄としてのナポレオン像に抵抗はないけれど、フランス以外のヨーロッパ諸国にしてみればたんなる侵略者ですよね。
「綺羅」はもともと「きらびやかな衣服」のことで、そこから「きらびやかなこと、栄華をきわめること」といった意味が派生しています。多くは「のごとく」の慣用句で見聞きするでしょう(もっとも、この慣用句も誤用で、本来は「綺羅、のごとく」だそうです)。
最後「呑めぬと百日」の「呑めぬ」は、「その条件は呑めない」というときの使い方で、さきの句と合わせて直訳的に記せば「綺羅(=きらびやかな衣服=栄華の時代)を譲り渡したけれどもそれを呑むことはできないと、もう百日(奮闘した)」となります。

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