- 手袋をはめ さあ外へ 雪化粧に 学び舎塗られる 轍も見えず 無音の世界 ほっこりね
- てぶくろをはめ さあそとへ ゆきげしょうに まなびやぬられる わだちもみえず むおんのせかい ほっこりね
手袋をはめ、さあ外へ。雪化粧にかつて通った学び舎は白く塗られているし、轍も見えない。一面雪に覆われた無音の世界だ。ほっこりするね。
雪景色です。
語法と内容について。
雪にまつわる作品を作ろうと考えて、最初に浮かんだのが「雪景色」です。でも、雪景色はそれ自体で「き」が重複している。そのため「雪化粧」に変更して臨みました。
面白いことに、雪景色ではなく雪化粧だからこそ、「塗られる」が無理のないことばづかいとして成立します。つまり、雪化粧と「化粧――白粉――を塗る」が掛かっているわけです。ことばの扱いに厳しい制約があるはずなのに、不思議とこんな組み合わせが生まれるのはかなパズルの妙でしょう。
途中で拾い出した「学び舎」と「轍」はどちらも素敵なことばです。なんとか組み入れたいと悪戦苦闘し、その甲斐あって両方とも盛り込むことができました。
タイトルでもある6句目「無音の世界」に関して。
雪が降り積もると、しんとしたえもいわれぬ静謐感が漂います。科学的には雪が音を吸収するからということになるのでしょうが、そんな理屈は野暮というもの。雪景色をイメージしたとき、ほどなく浮かんだのがこのフレーズでした。
ところで、完成したあとにふと「無音」が気になって手持ちの辞書を開いてみると、なんと載っていない。
一瞬ドキッとしたけれど、聞きなじんでいるから思いついたはずで、ネットにはたくさん出てくるしパソコンやスマホで打つときちんと変換されます。比較的最近のことばなのでしょうか。
ちなみに、読みが「ぶいん」になると意味がまったく変わりますね。
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