鬼と化す

  • 罪なく殺され 鬼と化す 魂消侘びても いや許せぬぞ うち屠り 無念を晴らし 雨の夜へ消え
  • つみなくころされ おにとかす たまげわびても いやゆるせぬぞ うちほふり むねんをはらし あめのよへきえ
  • 罪もなく殺され、鬼と化す。いざ、相手は魂消て侘びるけれど、いや許すことなどできない。うち屠って無念を晴らし、雨降る夜へと消えていった。

怪奇的な復讐です。

まったく関係のないテーマで作っていたところから路線変更し、鬼の物語が生まれました。
鬼といえば、現在マンガ『鬼滅の刃』がたいへんな話題です。原作もアニメも見ていませんが、自然と目に耳に入ってきます。その潜在的な影響もあったのでしょうか。
それはさておき、作り手である私自身 “どうなるんだろう” と展開の行方を見守りながら進めていきました。らしいラストになり、満足の出来です。

日本人であればだれもが鬼を知っているし、鬼は怖いものという基底的な認識も共有されている。でも、じっさいのところは明確に概念化しにくい存在です。
鬼に関する書物として名高い『鬼の研究』では大きく5つに分類され、5つ目としてつぎのような説明がなされていました。

変身譚系とも名づくべき鬼で、その鬼への変貌の契機は、怨恨・憤怒・雪辱、さまざまであるが、その情念をエネルギーとして復讐をとげるために鬼となることをえらんだものである。

作中の鬼はズバリこのタイプですね。

現代ではかわいらしい、ユーモラスなイメージの強い印象があります。そのようにキャラクター化、ビジュアル化されることが多いからでしょう。
本文の背景には内容に沿った昔ながらの、文字通り鬼気迫るものを。

語法について。
「魂消侘びても」は少し読みづらいかもしれません。「たまげる」はもと「たまぎる」で、どちらも「魂消る」と書きます。魂が消えるだなんて、字面から驚くさまがありありと伝わってくる。殺したはずが鬼となって現れた、それこそ魂消る思いがすることでしょう。ということで、作品の時代性や雰囲気も勘案して漢字表記にしました。
「うち屠り」の「うち」は動詞の頭に付く接頭語で、意味を強調します。これまでに口語文語で1回ずつ使用し、これで3回目。個人的に好きな表現ですが、闇雲に用いているわけではありません。憎んでも憎み切れない相手をいままさに葬り去る、そんな復讐シーンにピッタリですよね。

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