- ペットロス 胸にぽかり 穴 めげた やる気出ません この苦衷 えも言われぬ お空を見、呼ぶ はー、さびし
- ぺっとろす むねにぽかり あなめげた やるきでません このくちゅう えもいわれぬ おそらをみよぶ はーさびし
ペットロス。胸にぽかりと穴が。めげた。やる気出ません。この苦しい胸の内はなんとも言いようがない。お空を見上げ、名前を呼ぶ。はー、さびし。
ペットロスです。
まずは語句とともに内容のご説明を。
愛犬が死んだとき、「胸にぽかり穴」が空くということの意味を初めて実感しました。そんなことあるわけないと思っていたのが、ほんとうにそうでした。
気力が失われた――「めげた」――状態だから、「やる気」も「出ません」。
「この」苦しい胸の内――「苦衷」――はまさしく「えも言われぬ」もの。
気づけば「お空を見」上げ、名前を「呼ぶ」。思わず「はー」と涙まじりの溜め息をつく。
とても「さびし」い。
語法について。
いつから存在する慣用句かは不明ですが、「胸に穴が空く」だなんて、身体性と深く結び付いた先人の言語感覚には驚かされるばかりです。
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「えも言われぬ」は使う機会をずっと窺っていました。「え(も)~(打ち消し)」は文語によく見られる表現で、自身の文語作でもいくつか用いています。口語では「えも言われぬ(言えぬ)」の形でのみ残っており、ぜひ口語でもと考えていたのです。とうとう念願叶いました。
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「お空を見、呼ぶ」の「お空を見」に関して。
視線が虚しく漂うまま遠くの景色をぼんやり眺めていたことはあっても、空を見上げた記憶はなく、ここはややフィクショナルな表現です。ウソといわれると困りますが、「天に召される」「星になる」という言い回しがあるように、空へ向かって名前を呼ぶのは小説やマンガ、ドラマなどでしばしばなされる描写でしょう。
無理のない文意にまとめるための、比喩的な方便とご理解ください。
ペットには己の全てをさらけ出し、ぶつけることができます。
相手が人間だと、たとえ家族やどんなに親しい友人であっても、ありのままの自分を見せることにブレーキがかかる場合がある。でも、ペットに対してはそういう気遣いが一切要りません。
世話をしているのは自分でも、同時に癒され、依存している自分がいる。
喪う辛さを二度と味わいたくないと思いながら、また飼ってしまう。
難しいですね。
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