- 千代、日本を飾る 富士の山 空仰げ見ろ 雲侍り 雄大絶美 忘れ得ぬね 愛で和む時
- ちよにほんをかざる ふじのやま そらあおげみろ くもはべり ゆうだいぜつび わすれえぬね めでなごむとき
とこしえに日本を飾る、われらが富士の山。空を仰いで見よ、雲が仕えるように周りを漂い、はるかそびえる雄大絶美な姿だ。忘れることができないね、その偉容を愛で味わい気持ちが和んだときのことは。
日本を代表する遺産、富士山の雄偉な様を描きました。
作品を作るきっかけはつぎの長歌です。
天地の 分かれし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 富士の高嶺を 天の原 振り放け見れば 渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり 時じくぞ 雪は降りける 語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 富士の高嶺は
柿本人麻呂とともに歌聖と称される山部赤人が、富士の山を見やりながら詠んだという有名な歌。
これを久しぶりに読んで気持ちがにわかに高まり、その気分を保ちつつ作成しました。
語法について。
6、7句は当初「愛で和む時 忘れ得ぬね」でした。しかし「ね」で終わると少し軽い感じがします。口語で頻繁に用いられる終助詞「ね」はことばづかいとしてまったく問題ありません。ただ、富士山を描くのにこの終わりでは重みが足りない気がするのです。そこで、倒置にして締めました。体言止めになることで余韻も生まれるのではないでしょうか。
結果として、内容的に区切ることのできる2句目、5句目、7句目がいずれも体言止めでそろったのは、嬉しい副産物です。
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