ネットの誹謗

  • ネットの誹謗 不満放ち 群がる呪詛 傷負わせたり 殺めさえも 汚れて醜い ベロを抜け
  • ねっとのひぼう ふまんはなち むらがるじゅそ きずおわせたり あやめさえも よごれてみにくい べろをぬけ
  • ネットの誹謗。中傷する者が内に抱える不満をここぞとばかりに放ち、群がってくる呪詛である。じっさい被害者の心身に傷を負わせたり、ときに死へと追いやることさえもあるのだから。そんな汚れて醜いベロなんか抜いてしまえ。

ネットでの誹謗中傷についてです。

しばしば社会問題にもなるネットの誹謗中傷。
数や勢い、そして匿名性をんだ、たいへんに見苦しい行為です。
誹謗中傷は、する者が原因はさまざまにあれ心に溜め込んでいるヘドロのような不満のはけ口として放出されるもので、その粘り強さを軽んじることはできません。また、一時的に不満が軽減されるから行為者にとっては快楽であり、止まらなくなる。そうして汚穢が束になって降り注いだら、耐えられなくなる人がいるのも無理はないでしょう。安易な憶測に基づくデタラメを書き立てられたりプライベートなことを明かされたりと、”読まなければいい” “無視すればいい” では済まないこともあり、それらはほかごとをしていてもつねに「気」になって心に身体にまとわりつき、しだいに心身が摩耗していく。心身を病み、さらには自ら命を絶ってしまう最悪の結果が起きるのもむべなるかなと思います。
思想家の内田樹さんが、ネットでの誹謗中傷をいみじくも「呪い」とおっしゃっていました。まさしくその通りですよね。だれだか特定できない人間からの「満たされなさに満ちた」ことばを通した念によって、心に身体にじわじわと実害を被るのですから。自分が直接手を下すことなく相手に死をもたらすことにもなれば、それこそ呪いの成就そのものでしょう。
一昔前のいじめもひどいものだけれど、まだ互いの顔が見えていました。面と向かって攻撃されれば、それはそれで辛いものがあるにしても状況は異なります。いざとなれば仕返しもできますし。でも実体がないとこちらからは向かっていきようがない。ネットの怖さはまさにその匿名性が加わったことでしょう。それによって呪いと化した。さらには、指を動かすだけという簡便さ。もう加害者側は呪いたい放題です。
作中では図らずも「ベロを抜け」などと強い表現が出たけれど、ほんとうにそんなのベロは抜いてしまいたい。とにもかくにも、個人だけの対応に任せるのではなく、社会的な対策を講じることが不可欠でしょう。

語法について。
とりたてて説明を要するものはありませんが、完成した作品を眺めてみると、話題に合わせるように不満、呪詛、傷、負わせ、殺め、汚れ、醜い、ベロを抜け、とことばも禍々しいものが多くなりました。厳しい制約があることば遊びなのに不思議なもので、かなパズルの、ひいては日本語の奥深さを感じます。

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