メタボさんへ

  • メタボさんへ 俄病得て 重くならぬよう 常日頃 油脂除き取れ 地を踏み歩け 無理はせず
  • めたぼさんへ にわかやまいえて おもくならぬよう つねひごろ ゆしのぞきとれ ちをふみあるけ むりはせず
  • メタボさんへ。高血圧症や高脂血症といった無自覚の症状が、脳梗塞や心筋梗塞などの急な病気を引き起こして病状が重くならぬよう、そしてこれ以上体重が重くならぬよう、常日頃から飲食では油脂を除き取ろう。また大地を踏みしめ歩こう。ただし無理はせず。

メタボリックシンドロームです。

いつの間にか健康のことを気にしなければならない年齢になりました。
メタボにおける高血圧症や高脂血症などが自覚されることはほとんどありません。しかし、それらは脳梗塞や心筋梗塞などの深刻な症状を誘発する。
運動不足は認識しているので、私も気をつけたいです。

語法について。
「俄病得て」の「俄」は、名詞のまえにつくと「急な」という意味を付与します。(ひらがなで表記しますが)「にわか雨」はおなじみでしょう。ほかにも「にわかファン」や「にわか仕事」などと用いられますよね。また、「病を得る」は連語です。
「重くならぬよう」の「重く」は、訳に示したように「病気が重くなる」と「体重が重くなる」が掛詞になっています。
ところで、「重くなる」だけで「病気――体重――が重くなる」を含意させるとしたら、強引で不自然なことばづかいになるでしょう。たとえば “私は重くなって辛い” と聞けば誰もが首をかしげるように、病気や体重、または仕事の責任など、「何が」についての言及がないと日本語として十全でないと感じられるからです。
かなパズルは「あ~ん全てのかなを過不足なく用いる」条件下にあり、そこで自然な日本語表現を描き出すには、全体を通して意味がきちんと伝わるように心がけつつ、ことばをぎりぎりまで削ぎ落とす作業が必要になる場合が少なくありません。つまり表現の省略が求められるということです。ではどこまでの省略なら適切と認められるか。その見極めには、作り手の日本語に対する態度が問われているといえるでしょう。
「重くならぬよう」について考えてみると、直前に「病」があります。また、メタボといえば大きなお腹周りが想像されるように、多く肥満と関係していることは周知の事柄です。これら文脈や話題に関する常識を勘案すれば、「重く」が病気のこと、さらに体重のことを意味しているという理解を求めることに、無理はないと思います。いかがでしょうか。
「油脂除き取れ 地を踏み歩け」では、メタボを解消するための対策を表現しました。油脂をふんだんに含んだ飲食物を避けること、そしてウォーキングなどの有酸素運動をすること。内臓脂肪や皮下脂肪を減らすうえで、この2つはもっとも一般的な方法でしょう。なお、いずれも7字でかつ終わりが命令形と揃ったのは、偶然ではあってもバランスがとれて気分がいいです。

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