HIMARI

  • HIMARI 弦と弓 触れるや絶技・ 凄技で 妙な調べは 内に炎も 飽かぬ音色よ 目を剥くぞ
  • ひまり げんとゆみ ふれるやぜつぎ すごわざで たえなしらべは うちにほのおも あかぬねいろよ めをむくぞ
  • バイオリニスト・HIMARI。弦と弓が触れるや、繰り出されるのは絶技・凄技で、妙なる調べは内に炎のごとき熱情も宿す。飽くことのない素晴らしい音色だよ。誰もが目を剥くぞ。

バイオリニストのHIMARIさんです。

作成について。
先日NHKで放送された番組『NHKスペシャル HIMARIという名の才能~14歳バイオリニストの現在地~』で存在を知り、彼女が弾き始めた刹那、魅了されました。
分野を問わず、なにかに接してこれほどの感銘を受けたことは今までにそうありません。
視聴しているとかなパズルで描きたい思いがどんどん溢れてきます。
ただ、クラシック音楽には暗く、専門的なことはほとんど分かりません。
かなパズルは話題にかんする知識が豊富なほど作りやすいとはいえ、広範なクラシック音楽について急ごしらえで学んでもかえって頭が混乱しそうです。
そこで今回は中途半端に余分な情報を仕入れず、番組を通して自分が抱いた印象を率直に表すべくかな46字を組み合わせることに。
観終えてから数日は気分を醸成させつついくつかの語句をメモ書きしておき、そののち作成にとりかかり、完成させました。

語法と内容について。
まずは「内に炎も」にかんしてご説明したいと思います。
私が演奏からすぐさま感じたのは、まだ幼くすら見える彼女と発する音から迸る強烈な情感です。
年端もいかぬ少女――失礼な言い方ですが――がかくまでの表現をなし得ることが、映像を目の当たりにしてもにわかに信じられません。
かつてフィギュアスケートの浅田真央さんが現れたときにも驚いたけれど、これが天稟というものなのでしょう。
ともあれ、同時に「炎」の語が脳裏に浮かびました。

かなパズルにおいて「ほ」は余りやすく、作成にさいしお名前「HIMARI」とともに「炎」をキーワードに設定するうえで、そのことが念頭にあったのは確かです。
しかし、そもそもはじめ「炎」が浮かんだ時点でかなパズル作りのことを意識していたわけではないし、独りよがりに採り入れたわけでもありません。
ネットで調べてみると、世界的な音楽誌『The Strad』が「彼女の演奏を『内に秘めた炎(Contained flame)』と評し、単なる正確性を超えて聴衆の感情を揺さぶるエネルギーを高く評価してい」るとありました(「HIMARIによるジョン・コリアーノ『レッド・ヴァイオリン・カプリス』:現代ヴァイオリン演奏史における技術的・解釈的転換点」)。
番組内でも、師匠のアイダ=カヴァフィアンさんが「魂が込もっている(soulful)」と褒めています。
専門誌や先達のお墨付きがあれば、堂々と(?)用いることができようというもの。
HIMARIさんの内面や奏でる音に炎を感じるのはひとり私だけでなく、10代前半で極めて洗練された技術を有することがすでにして驚異的なのに、加えて熱情も同居しているからこそ数多の人を惹き付けるのでしょう。
ちなみに引用した訳文の「内に」とも重なりましたが、「炎」を含めた文句で最初に思いついたのは「内に炎を宿す」で、組み合わせの変遷により「内に炎も」となりました。
また、より音楽的な表現らしい「パッション」も候補に挙げてみたものの、ほどなくとり止めました。

「弦と弓 触れるや絶技・ 凄技で」にかんして。
「バ(ヴァ)イオリン」は「お」と「り」が、それぞれキーワードの「炎」「HIMARI」と重複しています。
しかしながら、HIMARIさんを描くにあたって欠かすことはできません。
ではどう表現するか、あれこれ探っていて見出したのが、「弦と弓」です。
バイオリンについても無知で「弓」の呼び名も番組のなかで知ったのですが、結果として余りやすい「ゆ」をしっかり活用でき、さらには上手い具合に自分の思いを形にすることができました。
というのも、出だしの一音からとりこになる様子を表すのに、「弦と弓」(が)「触れるや」、はもってこいの言い回しだからです。
かりに「バ(ヴァ)イオリン」を選び出せていたら「触れるや」を文脈へ組み込めず、全体の内容も違ったものになっていたでしょう。
バイオリンを間接的に指し示す「弦と弓」もなかなかいい感じだし、かなパズルということばの扱いが不自由なことば遊びでこういったフレーズを作り出せると、なんともいえない充足感が得られます。
HIMARIさんの技巧については、その道のプロたちが絶賛しているのですから疑問の余地がありません。
生物的なしなやかさと精密機械のごとき規律ある動き、および力強さと繊細さ、これら相反する要素が見事に両立していることがとてつもない、とは素人ながらの感想です。
具体的なテクニックをいい表す用語をもち合わせていないので、ひたすらに “すごい!” という気持ちで「絶技」と現代風の「凄技」を並べました。

「妙な調べ」は現代口語としてまったく問題のないことばづかいです。
ただし、慣用的に文語法の「妙なる調べ」というほうが一般的でしょう。
当初は私も「妙なる調べ」で拾い出していました。
ところが作成が進むなか、上述したとおり「触れるや」が重要な文句に。
そのため、「る」を省かざるを得ませんでした。

「飽かぬ音色よ」にかんして。
「妙なる」の代わりといってはなんですが、「飽かぬ」を使いました。
今でも残るこうした文語表現からは、口語にはない趣きが感じられますよね。

「目を剥く」は『トウモロコシ』でも使用しています。
あのときは大げさな物言いとしてだったけれど、ここでは誇張でもなんでもないありのままの表現です。
ところで、HIMARIさんを題材にした作品を締めくくることばが「目を剥くぞ」であることに、あるいはやや品がなくそぐわないとお感じになるかもしれません。
でも、驚愕ぶりを表すのにふさわしいのは間違いないでしょう。
日本語としてきちんと通用することを前提に、意外性ある表現がもたらされるのがことば遊びのユニークなところだ、とご理解いただければ。

このまま成長していったなら、HIMARIさんはどれほどの境位に達するのでしょうか。
稀有の才能が潰えることなく育つよう、陰ながら応援していきたいです。

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