- 抜ける青空 芽吹く山 清冽な川 鳥たちの声 峰には雪も シーンすべてを むさぼろう ピヨー
- ぬけるあおぞら めぶくやま せいれつなかわ とりたちのこえ みねにはゆきも しーんすべてを むさぼろう ぴよー
抜ける青空に芽吹く山、清冽な川や鳥たちの声、峰にはまだ雪も残っている。これら諸々のシーンすべてをむさぼるように楽しもう。ピヨー。おや、あの鳴き声はアオゲラだね。
あるうららかな春の日の、自然の情景を描きました。
語法と内容について。
1~4句には、決まり文句のような自然描写が並んでいるとお分かりいただけるでしょう。ことばの扱いに厳しい制約の課されたかなパズルにおいては、ふだん見聞きするありふれた――言わば平凡な――ことばづかいで構成することこそが難しく、したがって慣用的・定型的な表現を採り入れるのも簡単でありません。にもかかわらずこれだけ組み込むことができたのは、われながらちょっと信じられない気分です。青空に山に川に鳥の声と、バランスも申し分ないですよね。
つづく5句「峰には雪も」も4句目までの時節に適い、「…には~も」という言い回しが列挙してきた情景をまとめる役割を果たしている。
それらの「シーンすべてを」(6句)「むさぼろう」という7句目は、景色を味わう思いの強さがよく表せているでしょう。
そして、最後の「ピヨー」が作品にのどかなニュアンスと余韻を加味します。鳴き声の主はアオゲラ。もちろんこの時季の鳥です。
ええ、この作品に関しては自画自賛と言われてもかまいません。
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